パーパスと仕事・キャリア──転職しなくてもできるジョブクラフティングとは?

「もっと意味のある仕事がしたい」
「今の仕事に、パーパスを感じられない」
「このまま会社員を続けていていいのだろうか」
そんな思いを抱えたとき、多くの人が最初に考えるのは「転職」です。
もちろん、環境を変えることが必要な場合もあります。
でも、パーパスと仕事をつなぐ方法は、転職だけではありません。
今ある仕事の中で、自分の強み・価値観・パーパスに近づくように仕事をつくり直していく「ジョブクラフティング」という考え方があります。
ジョブクラフティングとは?
ジョブクラフティングとは、従業員自身が自分の仕事のタスク、人間関係、仕事に対する捉え方などを主体的に変えていくことです。
Wrzesniewski と Dutton が2001年に提唱した概念で、仕事の境界を「task(仕事の内容)」「relational(人との関わり)」「cognitive(仕事の捉え方)」の面から変えることで、仕事の意味や仕事上のアイデンティティが変わりうると説明しています。
つまり、
「会社から与えられた仕事をそのままこなす」
だけではなく、
「自分は、この仕事をどうすればもっと自分らしく、意味のあるものにできるだろう?」
と考えるのです。
パーパスとジョブクラフティングは相性がいい
パーパスは「なぜ」。
ジョブクラフティングは「では、今の仕事をどう変える?」
という関係で考えるとわかりやすくなります。
たとえば、
「人を育てること」が自分のパーパスだとします。
でも現在の仕事は、管理業務が中心かもしれません。
そこで、
部下との1on1を増やす。
後輩の育成役を引き受ける。
社内勉強会を始める。
新しい人材育成プロジェクトに参加する。
といった形で、今の仕事の中に「人を育てる」というパーパスとの接点を増やせます。
ジョブクラフティングには3つの方向がある
1.タスク・クラフティング
仕事内容そのものを少し変える方法です。
新しい仕事を引き受ける。
特定の仕事にかける時間を増やす。
仕事のやり方を変える。
自分の強みを使える仕事を増やす。
たとえば、歴史の先生が音楽好きなら、授業の中に音楽を取り入れる。
自分が得意な「教える」「企画する」「人をつなぐ」などの要素を、今の仕事に増やしていく方法です。
2.リレーショナル・クラフティング
人との関わり方を変える方法です。
誰と話すか。
誰と協働するか。
誰を支援するか。
どんな関係を育てるか。
たとえば、後輩を積極的に育成する、顧客との対話の時間を増やす、社内外のコミュニティに参加する、といった方法があります。
3.認知・クラフティング
仕事そのものの捉え方を変える方法です。
たとえば、同じ「事務作業」でも、
「書類を処理している」
と考えるのか、
「この仕事によって、現場の人が安心して本来の仕事に集中できるようにしている」
と考えるのか。
仕事の意味を、自分にとってより大きな目的とのつながりで捉え直す方法です。
ジョブクラフティングをすると、仕事の意味は変わるのか?
研究では、ジョブクラフティングと仕事の意味、person–job fit(自分と仕事の適合)の関係が調べられています。
Tims、Derks、Bakkerによる3週間の研究では、仕事の資源を増やしたり、新しい挑戦を増やしたり、妨げとなる仕事上の要求を減らしたりする行動が、翌週のperson–job fitの高さと関連し、その適合感がその後の仕事の意味づけと関連していました。
つまり、
「仕事が合っていない」
と感じたときに、すぐに「辞める」という結論へ行くのではなく、
「何が合っていないのか?」
「どの部分なら変えられるのか?」
を見る余地があります。
まずは「Before」の仕事を見える化する
ジョブクラフティングを実践するときは、まず今の仕事を書き出してみましょう。
現在のタスクをすべて並べ、
「時間をどれくらい使っているか」
「エネルギーをどれくらい使うか」
「自分にとって楽しいか、疲れるか」
などを見ていきます。
すると、
「実は、自分がやりたい仕事に時間をほとんど使っていない」
「得意ではないことばかりにエネルギーを使っている」
といった発見があるかもしれません。
次に「After」を描いてみる
次に、
「理想的だけれど、現実的な仕事の形」
を描きます。
今より増やしたい仕事は?
減らしたい仕事は?
もっと関わりたい人は?
もっと使いたい強みは?
もっと意味を感じたい瞬間は?
そして、その差を埋める小さな行動を3つ決めます。
たとえば、
「毎週1時間、若手育成に時間を使う」
「社内の新規プロジェクトに応募する」
「顧客と直接話す機会を月2回つくる」
などです。
大きなキャリアチェンジの前に、小さな実験をしてみる。
それによって、自分のパーパスと仕事との接点を確かめることができます。
仕事が「合わない」のか、「つくり方」が合っていないのか
もちろん、ジョブクラフティングだけでは解決できない状況もあります。
組織文化、人間関係、仕事内容、報酬、働く環境など、構造的に変えることが難しい問題もあります。
だから、
「パーパスを見つけたら、今の仕事を変えればいい」
という単純な話ではありません。
大切なのは、
「自分のパーパスと、今の仕事との距離はどこにあるのか?」
を見極めることです。
その距離を仕事の中で縮められる場合もあれば、転職や複業、独立、プロボノなど、環境を変えることが必要な場合もあります。
パーパスをキャリアの判断軸にする
パーパスは「この仕事が好き」という話だけではありません。
転職先を選ぶとき。
新しいプロジェクトを選ぶとき。
管理職を引き受けるとき。
副業を始めるとき。
学び直すとき。
そんな場面で、
「この選択は、自分が大切にしたいことにつながっているだろうか?」
と問いかける。
これが、パーパスをキャリアの判断軸として使うということです。
Project MINTでは、パーパスを見つけた後に、小さな行動実験を行い、「考える」だけでなく「動いて確かめる」ことを重視しています。現在の自己革新コースも、自己認識、思考習慣、行動という3つのフェーズで設計されています。
→ パーパスをまだ言語化できていない方はこちら「パーパスの見つけ方」
→ パーパスと幸福・ウェルビーイングの関係を知りたい方はこちら「パーパスとウェルビーイング」
Project MINTは、「人生100年時代に、パーパスとともに生きる大人を増やす」ことをミッションに、ミネルバ大学の教育メソッドをベースにした学びを提供しています。これまで250名以上が修了し、ニューヨーク・タイムズ、Forbes Japanにも掲載されました。



